思い出の海

おはようございます、ちょっと小さいおじさんです。

やはり崩れてきましたね。

予報は正しかったようです。

おじさん、断食3日目に突入しました。

こんなこと生まれて初めてじゃないかと思います。

何も飲まないといったようなストイックな断食ではなく、水分は補給しながらの断食です。

さすがに水分がなくなるのはマズいでしょうから、そこんとこはしっかりと。

何が変わったか。

変わってないのか。

それは明日にでもご報告したいと思います。

さて。

昨日のお話です。

朝、目を覚ましたおじさんは急に思い立ちました。

そうだ京都に行こう

そんなノリで、ちょっと思い出の土地を訪ねてきました。

死期が近づくとそういった現象があるそうです。

近づいているのでしょうか。

そこは、正確に言えば近年になって車で付近を通過したことはありました。

でも電車と徒歩で訪問するなんてのは実に40年ぶりといってもいいかもしれません。

急行などほかの手段はあるものの、わざと普通電車でのんびり行きました。

ちょっと走るとすぐ停まる。

後から来た早い電車に追い越されるのを待って、また発進する。

まるで自分の人生のようで、おじさんにはふさわしいそんな電車です。

そんなこんなでやっと到着。

駅舎を出ると風景は見たことも無いようなもの。

わずかに原型はとどめているでしょうか。

いや、こちらの記憶がおかしなことになっているのかもしれません。

でも記憶というのは恐ろしいもので、意外と道を覚えているものです。

迷うことなく歩き出しました。

懐かしい橋を渡る。

川沿いを歩く。

この川沿いの道路にカニが歩いていたのを覚えています。

大人の握りこぶしほどもある少し大きな赤いカニ。

幼児のころ、車につぶされてしまうそんなカニを不思議に思っていました。

中学生になって勉強を投げ出したおじさんは、ここでウナギ釣りに通うようになりました。

自宅をお昼過ぎに出て終電で帰ってくることもあったし、夕方から夜釣りして朝に帰宅することもありました。

ひとりでぽつんと川沿いに座り、竿先に付けた鈴が鳴るのをじっと待ち続けたものです。

UFOを見たのもこのときでした。

いまその場所は護岸整備され、駐車場になってました。

しばらくそこを懐かしみ、また歩き続けます。

海に出ました。

そこは白くきれいな砂浜、ではなく打ち上げられた貝殻などがたくさんあるようなそんな砂浜。

砂はねずみ色で、貝殻に混じって丸くなったガラス片や流木などがたくさんありました。

小さなころから海と言えばここの海岸でした。

小学校低学年時代は夏休みのかなりのあいだをここで過ごしました。

だからおじさんの海というものは、ハワイの海でも沖縄の海でもなく、ここの海なんです。

このザラザラしたねずみ色の砂浜の、きれいでもなんでもないそんな海なんです。

娘が欲しかった母は、おじさんに女の子用の紺色のワンピース水着を着せました。

おじさんが5、6歳のころでしょうか。

そのときのスナップ写真が撮られたのもこの海です。

そんな海を見に来たんです。

写真を撮ろうかどうしようか、30分くらい迷いました。

撮ったら何かが終わってしまうような、失ってしまうような、言いようもないそんな予感がしたからです。

でも撮りました。

しばらく砂浜を歩いているうち、いつの間にか撮ってしまいました。

馬鹿ですね。

きれいな海ではないかもしれなけど、でも吹く潮風はまさに海のそれだし、抜けるような晴天はやはり海にはふさわしい。

マリンスポーツを楽しむ若者たちを横目に砂浜を後にしました。

もう少し足を延ばしました。

昔よく来た港に向かいました。

ここは幼少期の思い出よりも、中学生以降の記憶が濃いです。

日曜日にはたまにここにきて投げ釣りしたりしてました。

ふらっと電車に乗ってやってきて、飽きたら帰る。

ひとりの気楽さです。

大学生になったらここから出る遊漁船に乗って相模湾で様々な釣りを楽しみました。

いろいろな魚を釣ったり、釣れなかったり。

そんな思い出深い港です。

昨日はそこで竿を出す親子が居ました。

ママと5歳男児の親子です。

どこかの釣具屋さんで安価なセットとイソメを買ってきてやってます、みたいな様子。

投げ竿なのに足元で、しかも仕掛を宙ぶらりんにしてやってる。

おじさんはちょっと離れたところで海を眺めていたのですが、視野に入ってくる。

この男児が奇声を上げながら岸壁を走り回る。

おせっかいのタチのおじさんは我慢ならずに声を掛けました。

道具の使い方、転落したら大事に至るから子供に注意するような事。

それでもお話をしながら小一時間ほどは一緒に釣りをしたでしょうか。

釣れたのはベラが二匹とキタマクラでした。

おじさんはちょっとしたヒーロー扱いです。

キタマクラは猛毒があるから食べてはいけない旨を念押しし、その場をあとにしました。

ほかの知らぬ人が見たら、ありふれた一家の休日にしか見えなかったかもしれません。

来た道を戻ります。

歩いている人は誰も居ませんでした。

狭い歩道を歩くおじさんを車がすれすれに追い抜いて行きます。

駅に近付くにつれ、昔味わったような気持ちが少しだけ思いだされました。

家に戻る、というこのなんとも言えない複雑な気持ちです。

自分で進んで釣りに来てるのに、実のところ帰りは早く家に帰りたくなっている。

ただいま、お帰り、だけでいいから誰かと話をしたい。

中学生の頃のそんな気持ち。

文才が無いから書き表せないのがもどかしい。

家に帰ったら靴が砂だらけになってることに気づきました。

お風呂場で洗いました。

また思い立ったら行ってみたいと思います。

今度も同じ海だといいのですが。

それでは今日も頑張りましょう。

では!